第6回宇宙開発利用大賞(主催:内閣府)における文部科学大臣賞の決定について(今井客員教授)

 第6回宇宙開発利用大賞(主催:内閣府)において、高知工業高等専門学校の今井一雅 客員教授(名誉教授)が文部科学大臣賞として表彰されることになりました。

 

2024年2月27日に内閣府のホームページで発表
「第6回宇宙開発利用大賞 受賞事例」が決定しました。
https://www8.cao.go.jp/space/prize/prize.html
賞名: 文部科学大臣賞
事例名: 高専発の超小型衛星開発を通した次世代宇宙人材育成の展開
受賞者名: 高知工業高等専門学校・客員教授(名誉教授) 今井一雅

 

 内閣府の主催する宇宙開発利用大賞は、宇宙開発利用の推進に多大な貢献をした優れた成功事例に関し、その功績をたたえることにより、我が国の宇宙開発利用の更なる進展や宇宙開発利用に対する国民の認識と理解の醸成に寄与することを目的とした表彰制度です。平成25年度に創設後、隔年に開催されており、今年度で6回目となります。

 文部科学大臣賞は、科学技術・学術の振興等の視点から特に顕著な功績があったと認められる事例に授与されます。今回表彰される事例の概要は、次の通りです。

 

【事例の概要】
 国立高専初となる超小型衛星「KOSEN-1」が高専連携で開発され、打ち上げに成功しました。これを出発点として、高専衛星シリーズとなるKOSEN-2R衛星とKOSEN-3 衛星の打ち上げに向けて、継続的な高専連携による衛星開発が行われています。この衛星開発を高専における究極のものづくり教育として位置付け、幅広い学生を対象とした宇宙人材育成に関する教育プログラムを立ち上げ、広範囲かつ高い専門性を持つ次世代宇宙人材の育成が展開されています。

宇宙開発利用大賞_画像1.jpeg 宇宙開発利用大賞_画像2.jpeg
KOSEN-1衛星の打ち上げ成功について 地球1万周を記念して公開された動画

 

【具体的成果等】

1.宇宙開発利用の新たな領域創造への貢献
 国立高専初の超小型衛星「KOSEN-1」の開発には、2 年半をかけて 50 人を超える高専生が参加し、令和 3 年 11 月 9 日に JAXA イプシロンロケット5号機により打ち上げに成功しました。この KOSEN-1 衛星は、JAXA の革新的衛星技術実証プログラムに採択されたもので、(1)超高精度姿勢制御技術、(2)超小型 Linux マイコンボードによる OBC、の先進的な技術実証を行うことに成功しました。また、文部科学省の宇宙航空科学技術推進委託費に採択された実践的若手宇宙人材育成プログラムを出発点とし、「高専スペース連携」で提案された宇宙人材育成プログラムが 3 回連続採択され、高専型次世代宇宙人材の育成を展開してきました。

 

2.宇宙開発利用市場の拡大への貢献
 従来の CubeSat ではスペース的な問題や電力消費の問題で、姿勢制御装置を積極的に導入することができませんでした。KOSEN-1 衛星に搭載されたデュアル・リアクションホイールは、コンパクトで姿勢を変える時だけ電力消費があることから、CubeSatへの応用が期待されています。また、CubeSat の心臓部のコンピュータ(OBC)には、PIC マイコンや H8 マイコンなどが使われてきましたが、KOSEN-1 衛星で採用されたラズベリーパイ CM1 は、安価な民生品で汎用性があることから、今後の CubeSat への採用が期待され、そのソフト開発を含めた企業化も可能となっていくと考えられます。

 

3.経済・社会の高度化への貢献
 超小型衛星「KOSEN-1」に搭載されている超小型Linuxマイコンボードによる OBC には、教育用マイコンボードとして世界的に普及しているラズベリーパイ(Raspberry Pi)が使われています。このラズベリーパイのマイコンボードは、子供から大人まで親しまれており、IoT の中核としても多くの事例があります。令和 3 年 11 月 23 日に発表された「みんなのラズパイコンテスト 2021」では、「ラズパイ衛星 KOSEN-1」が、最高賞のグランプリ賞に匹敵する特別賞を受賞しており、開発中のKOSEN-2R 衛星と KOSEN-3 衛星には、継続して Raspberry Pi が OBC に採用されていることから、今後、そのノウハウが IoT 等の利用に広範囲につながっていくと期待されています。

 

4.技術への貢献
 KOSEN-1 衛星での姿勢制御には世界特許を持つデュアル・リアクションホイールを衛星として初めて搭載し、高精度の衛星の姿勢制御の実証実験を行いました。このデュアル・リアクションホイールは、2つの回転円盤をお互いに逆方向へ動かすタイミングを調整することにより、姿勢制御が可能なもので、高専生が手作業でエナメル線を巻いた自主開発の平面モータを 2個小型化して衛星に実装しています。KOSEN-1 衛星では、この世界初の試みに成功し、安価な超低消費電力の姿勢制御装置として、様々な衛星への応用が可能となり、新しい姿勢制御技術としての貢献が期待されます。

 

5.国民理解の増進・人材育成への貢献
 KOSEN-1 衛星開発においては、いろいろな高専、学科の 50 名を超える学生が参画しており、本科 5 年の卒業研究や専攻科の特別研究に取り組む学生だけでなく、各高専の宇宙科学研究部などの部活動に参加する学生(16 歳から 20 歳までの広い年齢層)も参加しました。本格的な衛星開発に携わる学生としては最年少となり、高専での人材育成が、宇宙産業へも貢献できることを多くの報道で示してきました。

地域連携   2024/03/05   企画係